GR召喚は環境を壊した。 前編

※この記事は2020/06/01に書かれています。

 

デュエルマスターズ?前に《ダイヤモンドブリザード》が弱くなって今は《ボルバルザーク》がブイブイ言わせてるんでしょ?」

間違いではないだろう。事実そうかもしれない。

しかしそれはデュエルマスターズプレイスの話だ。

ここではデュエルマスターズの最新ギミック(といっても登場したのは2019年3月中旬だが)である「GR召喚」の歴史を順に見ていこう。

 

GR召喚とは

そもそもGR召喚とは何か。

GR(ガチャレンジ)召喚は特定のカードの能力によって効果を発動するキーワード能力だ。デッキ構築段階でGRクリーチャーを12枚過不足なく用意することでGRゾーンとして山札とは別の束として用意する。そうして用意した束を無作為化し、ゲーム中にGR召喚を行うことでGRゾーンの1番上のカードを表向きにして召喚することができるようになる。GRクリーチャーは通常の4枚制限ではなく2枚制限となっており、狙ってそのクリーチャーをGR召喚するには6分の1の確率となっておりまさしく「ガチャ」となっている。山札・超次元ゾーンに続く新たなゾーンの誕生はさらにゲームを盛り上げる要素となる。...はずだった。

 

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裏面が白くて区別もしやすい。表面の枠も変わっていて一目でわかるデザインとなっている。

 

月刊コロコロコミック2019年4月号

GR召喚はコロコロコミック付録の52枚デッキで初登場した。付録デッキということでカードの性能自体は控えめだったが特筆すべきはGR召喚というギミックのルールと当時存在していた踏み倒しに対するメタクリーチャーの効果範囲であった。

「GR召喚:自分の超GRの上から1枚目を、コストを支払ったものとして召喚する」

 

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当時よく見た踏み倒しメタクリーチャー達。この中でGR召喚に対してメタを張ることができるクリーチャーはミクセルだけであった。GR召喚メタとして《洗脳センノー》が使われるようになったのはもうちょっと後のお話。

もちろん付録デッキのGRクリーチャーはこの時点では見向きもされていなかった。最初のGRクリーチャーはGR召喚するカードも含め横並びさせてビートダウンするようなデザインだったため最強のクリーチャー、《”轟轟轟”ブランド》が4枚使えたデッキに追いつけるはずがなかったのだ。

             

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“轟轟轟”ブランド 火文明 (7)

クリーチャー:ビートジョッキー 9000

マスターG・G・G:自分の手札がこのカードだけなら、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。

スピードアタッカー W・ブレイカ

このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のマナゾーンに火のカードがあれば、カードを1枚引く。その後、自分の手札を好きな枚数捨ててもよい。こうして捨てた手札1枚につき、相手のパワー6000以下のクリーチャーを1体、破壊する。

一言で片付けるなら”最強”。なぜ4枚使えたのか。

そしてこの約2週間後、 超天篇第1弾が登場する。

 

DMRP-09 超天篇 第1弾

新世界ガチ誕!超GRとオレガ・オーラ!!

 新環境の始まりを告げる第1弾、《サイバー・K・ウォズレック/ウォズレックの審問》のようなパワーカードが収録されているがやはり特筆するべきはGR召喚関連のカードだろう。

GRクリーチャーには《The ジョラゴン・ガンマスター》、《ドドド・ドーピードープ》、《ヤッタレロボ》といった明確にGR召喚をするメリットになるカード、GR召喚を行うカードには《音奏 プーンギ》、《♪銀河の裁きに勝てるもの無し》、《TOKKO-BOON!》のような軽く有用なカードが多数登場した。

 

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GRゾーンから出るフィニッシャーは試行回数を重ねることで外れてもビートダウンの横並び、当たればそのままフィニッシュと恩恵を受けている。

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メリット能力にGR召喚が付いてくる。「GR召喚を行う。」というテキストのカードは2マナだが実質的には1~1.5マナ相当の能力になっている点が現代デュエマを物語っている。

余談ではあるが、GRクリーチャーは投入制限枚数の関係からか封入率が絞られている。SRである《ドドド・ドーピードープ》はカートンに1~0枚ということもあり市場価格は5000円近くまで跳ね上がった。

そうした中開催されたGPで優勝したデッキ、その中に”ヤツ”はいた。

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BAKUOOON・ミッツァイル 火文明 (9)

クリーチャー:ビートジョッキー/ワンダフォース 9000

このクリーチャーを召喚する時、自分のクリーチャーを好きな数破壊してもよい。こうして破壊したクリーチャー1体につき、このクリーチャーの召喚コストを2少なくする。ただし、コストは0以下にならない。

W・ブレイカ

このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、このクリーチャーを召喚するときに破壊されたクリーチャー1体につき、GR召喚する。

自分のクリーチャーすべてに「スピードアタッカー」を与える。

後に環境を塗りつぶす最悪のカード

《”轟轟轟”ブランド》と《BAKUOOON・ミッツァイル》を組み合わせた【赤白メタリカミッツァイル】はGRクリーチャーの質など関係なしに展開力と打点で新時代の圧倒的なパワーを見せつけたのであった。だがミッツァイルの環境支配はまだ始まってすらいなかった。

 

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GRが流行る→《異端流し オニカマス》が減る→オニカマスに弱いコンボが流行るという図式で誕生した【ヒラメキウォズレック】。あまりの暴れっぷりに一時期環境を破壊し尽くした。

 

100円パックと3種のスタートデッキ 

第2弾発売までにも1つの再録+ちょっとの新規が入ったパックとデッキが3個発売された。もちろん新規GRクリーチャーは増えたのでさらに選択肢が増えGRゾーンの多様性が生まれることになった。

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まだここまではぶっ壊れというわけでもなく色んな事ができるギミックなんだと受け入れられていた。

 

DMRP-10 超天篇 拡張パック第2弾

青きC.A.P.と漆黒の大卍罪 

 《BAKUOON・ミッツァイル》の強さが周知され【ヒラメキウォズレック】が環境を荒らす中発売された第2弾でも強力なGRクリーチャーが多数収録された。中でも「マナドライブ」というキーワード能力が非常に強力でGRクリーチャーのパワーレベルを一段階上に押し上げたと言っても過言ではないだろう。

「マナドライブ...マナドライブ(X)・(Y)」:~(攻撃・バトルゾーンに出た等)した時、自分のマナゾーンにY文明が存在し、X枚以上のカードがあれば能力を得る」

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 《ドドド・ドーピードープ》と合わせて速さも値段も従来のレベルを完全に超えた《グッドルッキン・ブラボー》、《ガヨウ神》殿堂でドローの弱体化を受けた【ジョーカーズ】の新たなドローソース《ゴッド・ガヨンダム》 、後に最強の盤面制圧力を手に入れることとなる《スカップⅢ》の他にも《マグ・カジロ》、《シェイク・シャーク》、《ソニーソニック》、《パッパラパーリ騎士》等強力なカードが満載でGRゾーンの選択肢がある意味で最も多い時期だっといえる。

また、GR召喚を行うカードもさらにパワーが上がってきており、すべての元凶となってしまった《知識と流転と時空の決断》、前弾の《ホーリースパーク》+GR召喚だった《♪仰ぎ見よ閃光の奇跡》を超えるカウンター性能を持つ《♪奏でよグローリー》、4マナで最高4打点が発生し《異端流し オニカマス》と合わせて即リーサルも狙える《MANGANO-CASTLE!》等後に環境で暴れる呪文が多数揃っている。

 

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その後、新殿堂改訂・デュエキングパック(GRのカードは収録されていない)発売と続き、キーパーツを失った【ヒラメキウォズレック】は消滅、《”轟轟轟” ブランド》は殿堂入りで1枚となり環境に【モルトNEXT】、【サンマックス】、【レッドゾーン】等が現れ平穏な時代を迎えることになった。その中でもミッツァイルは【赤緑ジョーカーズミッツァイル】として環境に食い込んでいた。

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サンプルリスト【赤緑ジョーカーズミッツァイル】

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夢のジョー星  無色[ジョーカーズ] (5)

呪文:ジョーカーズ

コストを支払うかわりに、自分のジョーカーズを4体タップして、この呪文を唱えてもよい。自分の山札の上から4枚を見る。その中から1枚ずつ、自分の手札、山札の一番下、マナゾーンに置き、もう1枚を山札の一番上に戻す。

バングリッドX7 自然文明[ジョーカーズ] (4)

クリーチャー:ジョーカーズ 4000

マッハファイター(このクリーチャーは、バトルゾーンに出たターンの間、タップまたはアンタップしているクリーチャーを攻撃できる)

このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚をマナゾーンに置く。

自分のターン中、クリーチャーを1体、自分のマナゾーンから召喚してもよい。

バトルゾーンまたはマナゾーンに自分のジョーカーズが合計6枚以上あれば、このクリーチャーを自分のマナゾーンから召喚してもよい。

ジョジョジョ・マキシマム 無色[ジョーカーズ] (9)

呪文:ジョーカーズ

G・ゼロ:バトルゾーンまたはマナゾーンに自分のジョーカーズが合計11枚以上あれば、この呪文をコストを支払わずに唱えてもよい。

バトルゾーンにある自分のクリーチャーを数える。このターン、自分のクリーチャー1体はその数のシールドを追加でブレイクし、そのクリーチャーの攻撃中、相手は呪文を唱えられない。

盤面にジョーカーズを4体並べて《夢のジョー星》を唱える。ミッツァイルを探しながら赤マナを埋めることで盤面のタップされている4体を破壊してミッツァイルをプレイ。《パッパラパーリ騎士》でマナを増やし《ツタンメカーネン》、《ゴッド・ガヨンダム》で手札を増やしさらにミッツァイルを展開していく。ミッツァイルは5体以上破壊してさらにGR召喚の回数を増やすこともできるため、GR召喚によるアドバンテージをさらに稼いでいくことができる。最終的には《単騎連射マグナム》と《ジョジョジョ・マキシマム》を組み合わせることで相手のSトリガーをケアしながら殴り勝つことができる。この「ミッツァイルを連打してGRクリーチャーのcipを使いまわしアドバンテージを稼いでいく」という動きは後に最強のデッキを生むきっかけとなった。


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環境後期には無限ループ型も存在しましたね。

 

アルティメットクロニクルデッキ発売
時は8月上旬、毎年恒例となっているクロニクルデッキが発売された。クロニクルデッキとは過去の人気テーマ等をリメイクし古参プレイヤーが嬉しいようなちょっとお高いデッキのことだ。今年のテーマは【刃鬼】と【デッドゾーン】であったが、この【デッドゾーン】の方に問題のカードが大量封入されたのであった。

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問題のカード達。発売して一瞬で環境を染め上げた。

圧倒的な盤面制圧能力とリソースの回収能力、加えてフィニッシュは追加ターンを絡めることで相手からのカウンターもほぼ封じ込めてしまうというツールボックスデッキは瞬く間に人々に知れ渡りメタゲームは【青黒緑デッドダムド】を中心に動き始め、デッドダムドを使うかデッドダムドに有利なデッキを使うかという環境になっていった。このデッキにおけるGR召喚も盤面制圧に長けており《無修羅デジルムカデ》を前述のスカップⅢに付けることですでに出ている盤面だけでなく後続も制圧できるようになる。

また、4ターン目に盤面を取り始めるこのデッキの前では【ジョーカーズミッツァイル】の展開力では間に合わないことが多くこの瞬間はミッツァイルは姿を消していた。

 

そんな中、公式による超天篇3弾のカード公開が始まった。

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続く