君は後手で1枚ドローした。ゲームは終了した。

 

 

~ここから茶番~

 

君は春にデュエルマスターズを始めた。最初に組んだデッキは【赤緑キリフダッシュ】。《タイク・タイソンズ》から《モモダチ モンキッド》や《ヤッタレマン》にJチェンジをすることでマナ加速を行い《熊四駆 ベアシガラ》に繋げることでさらなるマナと手札を確保し、《勝熱英雄 モモキング》、《バークアステカA》といった強力なキリフダッシュクリーチャーでフィニッシュするデッキだ。

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タイク・タイソンズ 自然文明[ジョーカーズ] (2)
クリーチャー:ジョーカーズ 1000
Jチェンジ4(このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーと自分のマナゾーンにあるコスト4以下のジョーカーズ1体を入れ替えてもよい)
このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。

ヤッタレマン 無色[ジョーカーズ] (2)
クリーチャー:ジョーカーズ 2000
自分のジョーカーズを召喚するコストを1少なくする。ただし、コストは0以下にならない。

モモダチ モンキッド 自然文明 (3)
クリーチャー:ジョーカーズ/チーム切札 1000
<キリフダッシュ>[自然(2)](自分のクリーチャーの攻撃の終わりに、そのクリーチャーがその攻撃中にシールドをブレイクしていれば、このクリーチャーを[自然(2)]支払って召喚してもよい)
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。

 

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熊四駆 ベアシガラ 自然文明[ジョーカーズ] (7)
クリーチャー:ジョーカーズ/チーム切札 8000
<キリフダッシュ>[自然(4)](自分のクリーチャーの攻撃の終わりに、そのクリーチャーがその攻撃中にシールドをブレイクしていれば、このクリーチャーを[自然(4)]支払って召喚してもよい)
W・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを2つブレイクする)
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札の上から2枚をマナゾーンに置く。その後、クリーチャーを1体、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。

勝熱英雄 モモキング 火/自然文明 (8)
クリーチャー:ヒーロー・ドラゴン/ジョーカーズ/チーム切札 12000
<キリフダッシュ>[火/自然(6)](自分のクリーチャーの攻撃の終わりに、そのクリーチャーがその攻撃中にシールドをブレイクしていれば、このクリーチャーを[火/自然(6)]支払って召喚してもよい)
スピードアタッカー
T・ブレイカ
各ターン、このクリーチャーがはじめて攻撃する時、その攻撃の後、このクリーチャーをアンタップする。
多色ではない呪文の効果、または、多色ではないクリーチャーの能力によって、相手がクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーは選べない。

バークアステカA 火/自然文明 (8)
クリーチャー:ジョーカーズ/チーム切札 11000
<キリフダッシュ>[火/自然(10)](自分のクリーチャーの攻撃の終わりに、そのクリーチャーがその攻撃中にシールドをブレイクしていれば、このクリーチャーを[火/自然(10)]支払って召喚してもよい)
このターンにブレイクされたシールド1つにつき、このクリーチャーの「キリフダッシュ」コストを最大4少なくする。ただしコストは[火/自然(2)]より少なくならない。
スピードアタッカー
W・ブレイカ
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、パワーの合計が7000以下になるよう、相手のクリーチャーを好きな数選び、持ち主の墓地またはマナゾーンに置く。

 さて、君は初めて店舗大会に出ることにした。1回戦は運悪くじゃんけんで負けてしまい相手が先攻だ。まずは手札を確認して...

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素晴らしい。これ以上ないような理想的な初手ではないか。

対戦相手の1ターン目のマナチャージは...《ニコル・ボーラス》。

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高コストのドラゴンカード、つまり相手のデッキはコントロールかビッグマナか?つまり遅いデッキの可能性が高い。速さと打点を兼ねている【赤緑キリフダッシュ】にとっては有利なデッキのはずだ。

この試合は貰った。ターンを得た君は1枚引いてまずは多色カードである《勝熱英雄 モモキング》をマナチャージしてターンを返した。

ゲームは終了した。

相手の場にはパワー∞のブロッカーが登場した。しかもコスト5以下の呪文もクリーチャーの効果も無視されるという。もはやゲームにならない。君は負けてしまった。

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~ここまで茶番~

 

2ターン目にコスト∞のフィニッシャーを踏み倒してゲームを破壊するそれが今のデュエル・マスターズ...いや、DM(ドラグナー・マスターズ)だ。そんな現代デュエマの環境の中心、【連ドラグナー】について確認していこう。

そもそもなぜこのデッキがここまで騒がれるようになったのか。事の発端は2020年8月22日に発売されたクロニクル最終決戦デッキだ。このクロニクルデッキシリーズは毎年発売されている過去のテーマをリメイクした構築済みデッキであり、あの悪名高き《天災 デドダム》もここが出身で環境を染め上げたのは記憶に新しい。

今年のテーマは「超次元」であり、「サイキッククリーチャー」と「ドラグハート」にスポットが当てられている。そしてこのドラグハート側である「龍魂紅蓮譚」は発売前の評価自体はあまり高くなく、どちらかというともう一方のサイキッククリーチャーテーマ、「覚醒流星譚」に関心が寄せられていた。

デッキ発売後、評価は一変する。

大会上位には当然のごとく並ぶ【ドラグナー】の文字。あの【ドッカンデイヤー】と【バーンメア】が並んだ時と同じかそれ以上に環境を支配しようとしていた。

 

【連ドラグナー】とは「連」続で「ドラグナー」を展開するデッキだ。昔デュエル・マスターズを遊んでいた人であれば【連ドラ】の名前を聞いたことがあるだろうが動き方は同じようなものだ。...まあ現在は連続要素も失われ単に【ドラグナー】と呼ばれているのだが。

そんな【ドラグナー】の展開力のキーになっているのが《爆熱剣 バトライ刃》だ。

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ドラグハートについては前回の《ヘブンズ・フォース》の記事を参照していただければ。

 爆熱剣 バトライ刃 火文明 (3)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せてもよい。それが進化でないドラゴンか進化でないヒューマノイドであれば、バトルゾーンに出す。それ以外なら山札の一番下に置く。
これを装備したクリーチャーは攻撃されない。
龍解:自分のターンの終わりに、そのターン、ドラゴンをバトルゾーンに出していれば、このドラグハートをフォートレス側に裏返してもよい。

 《ヘブンズ・フォース》から《爆龍覇 ヒビキ》を出し《爆熱剣 バトライ刃》を装備して大型ドラゴンに繋げる、という動きは前回解説した通りだが今の【ドラグナー】は「出せば勝ち」な大型ドラゴンを引き当てることで実質的なキルターンの高速化に成功させている。そしてその「出せば勝ち」な状況を作ることができるのが先述の《ニコル・ボーラス》と《∞龍 ゲンムエンペラー》、そして《光神龍スペル・デル・フィン》だ。

 

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ニコル・ボーラス 水/闇/火文明 (8)
クリーチャー:エルダー・ドラゴン/プレインズ・ウォーカー 7000
W・ブレイカ
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の手札から7枚選び、捨てる。
このクリーチャーが攻撃する時、相手のクリーチャーを1体、破壊する。

∞龍 ゲンムエンペラー 水/闇文明 (∞)
クリーチャー:∞マスター・ドラゴン/チーム零 ∞
<ムゲンクライム>4(自分のクリーチャーを4体タップして、[水/闇(4)]支払って、このクリーチャーを自分の手札または墓地から召喚してもよい)
∞ ブレイカー(「∞ブレイカー」を持つクリーチャーは、相手のシールドを好きな数ブレイクできる)
ブロッカー
コスト5以下のクリーチャーの能力とコスト5以下の呪文の効果を無視する。

神龍スペル・デル・フィン 光文明 (9)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン 6000+
W・ブレイカ
相手は、手札を表向きにしてプレイする。
相手の手札にある呪文1枚につき,このクリーチャーのパワーを+2000する。
相手は、呪文を唱えることができない。

 《ニコル・ボーラス》は登場時能力で相手の手札を(ほとんどの場合)すべて叩き落すことができる。2ターン目に《ロスト・ソウル》を撃たれて返せるデッキなどほとんどない。また、赤青黒の3色というのも大変噛み合いがよく、マナに置くことで各種4マナ以下ドラグナーの「マナゾーンにある文明のドラグハートを装備」にナチュラルに貢献できるのもポイントが高い。

《光神龍スペル・デル・フィン》は呪文ロックができる。これは相手のデッキ次第ではあるが呪文主体のデッキでは当然勝ちに直結するし、たとえそうでなくても相手の手札を見ながらプレイできるということはプランも立てやすく裏目を引くことが少なくなるのは重要だ。

そして極めつけは《∞龍 ゲンムエンペラー》。コスト∞パワー∞シールドブレイク数∞とまさに規格外の数字を持つこのクリーチャーは正規の方法では召喚できない。本来は「ムゲンクライム」によって召喚することを想定されていたのだが...

このクリーチャーは持ってしまった。「ドラゴン」という種族を。

これにより比較的踏み倒ししやすいクリーチャーとして誕生した《∞龍 ゲンムエンペラー》は制圧力も規格外。踏み倒しまみれな現代デュエマにおいても序盤に5コスト以下のカードを封じてしまえば勝利は目前だ。こちらの後続の龍覇達も能力を失ってしまうが、同型における相手の返す札を完全に無効化することができる他、ドラグハートは能力を失わないので、すでに盤面に出すことができていればその《爆熱剣 バトライ刃》は問題なく能力を発揮することができる。

 

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大樹王 ギガンディダノス 闇/自然 (12)
クリーチャー:ジャイアント・ドラゴン/不死樹王国 50000
ワールド・ブレイカー(このクリーチャーは相手のシールドをすべてブレイクする)
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の手札をすべてマナゾーンに置く。
自分は、このクリーチャーよりパワーが小さいクリーチャーに攻撃されない。
<フシギバース>[闇/自然(14)](自分のクリーチャーを1体タップしてマナゾーンに置き、[闇/自然(14)]からそのクリーチャーのコストを引いた数のコストを支払って、このクリーチャーを自分の墓地から召喚してもよい。ただし、コストは[闇/自然(2)]より小さくならない)

偽りの王 ナンバーナイン 光文明 (9)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 9000
W・ブレイカ
相手は呪文を唱えることができない。
歓喜の歌 光文明 (3)
呪文
自分の山札の上から9枚を見る。その中からコスト9のカードを1枚、相手に見せてから手札に加えてもよい。残りをシャッフルし、山札の一番下に置く。

上記以外にもドラゴンの選択肢は多い。

 《大樹王 ギガンディダノス》は《ニコル・ボーラス》の代わりに採用することが考えられる。マナに置いた際に赤マナを出すことができない、相手の手札をマナ送りにしてしまうのでトップで解決される可能性が高いというデメリットがあるが攻撃を封じる能力はそれ以上のメリットにもなりうる。

《偽りの王 ナンバーナイン》は《光神龍スペル・デル・フィン》の代用枠。手札を見れなくなった代わりにパワーラインが上がっているため、殴り返しに対して多少強くなることに加え、「・」が名前に存在しないため《マキシマムザ亮君(暴天覚醒MAXIMUM神羅曼象)》で破壊されない。

また、呪文面《歓喜の歌》があるツインパクト版では《ロジック・サークル》でデッキトップに積むことができるというメリットがあるが3マナのカードにもなってしまうので《ウォズレックの審問》でハンデスされてしまうというデメリットも存在する。これもまた一長一短だ。

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マキシマムザ亮君(暴天覚醒MAXIMUM神羅曼象) 闇文明 (7)  
NEOクリーチャー:デーモン・コマンド/ヒューマノイド 13000
NEO進化:自分の、名前に《・》を含まないクリーチャー1体の上に置いてもよい。
T・ブレイカ
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、名前に《・》とあるクリーチャーをすべて破壊する。
相手は名前に《・》とある呪文を唱えられない。

ロジック・サークル 光文明 (1)
呪文
S・トリガー
自分の山札を見る。その中から呪文を1枚選び、相手に見せてもよい。その後、山札をシャッフルし、その呪文を山札の一番上に置く。

サイバー・K・ウォズレック 水文明 (6)
クリーチャー:サイバー・コマンド 6000
W・ブレイカ
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、コスト3以下の呪文を合計2枚まで、両プレイヤーの墓地から選ぶ。それらをコストを支払わずに唱え、その後、持ち主の山札の一番下に置く。
ウォズレックの審問 闇文明 (2)
呪文
相手の手札を見て、コスト3以下のカードを1枚選び、捨てさせる。

余談だが、《マキシマムザ亮君(暴天覚醒MAXIMUM神羅曼象) 》はヒューマノイド、《爆熱剣 バトライ刃》はドラゴンだけでなくヒューマノイドも盤面に出すことが可能なので、《∞龍 ゲンムエンペラー》が登場する前の【ドラグナー】に採用されていた実績がある。

 

これら巨大ドラゴンは最速2ターン目、平均ターンでは3.5ターンほどで盤面に登場する。しかしデッキの一番上という不確定要素に頼るような運ゲーデッキが勝てるのだろうか?

ではここでこのカードを見ていただきたい。

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デュエマ史上最強の能力、「革命チェンジ」。いつ何時もデュエマというゲームを破壊している。

勇者の1号 ハムカツマン蒼 火/自然文明 (5)
クリーチャー:メガ・ドラゴン/革命軍/ハムカツ団 4000
革命チェンジ:火または自然のクリーチャー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札の上から5枚を見る。その中から多色クリーチャーを1体選んで相手に見せ、自分の山札の一番上に置いてもよい。残りを好きな順序で自分の山札の一番下に置く。

 《光神龍スペル・デル・フィン》は単色なので対象外だが他の2体と《最終龍覇 グレンモルト》は多色なため問題ない。

「《爆熱剣 バトライ刃》を装備した火のクリーチャーで攻撃し、攻撃時能力と革命チェンジを宣言、革命チェンジ解決→《勇者の1号 ハムカツマン蒼》の能力を解決(デッキトップに多色ドラゴンを積む)→《爆熱剣 バトライ刃》の能力を解決(積んだドラゴンを場に)」

こうすることでほぼ確実にゲームを決めるドラゴンを召喚することができるだろう。40枚のデッキの上から5枚を見て12枚の内1枚を引き当てるなど容易い。もはや運ゲーと切り捨てることはできない。

また、革命チェンジによってドラグナーを手札に戻すことができるため後続の確保もできる他、《イーヴィル・フォース》のターン終了時の自壊デメリットも帳消しにできる点は見逃せない。《龍覇 ラブエース》からは革命チェンジできないのは気になるがそれを差し引いてもデッキとの噛み合い方は素晴らしい。

 

速さ・安定性・制圧力を兼ね揃えたこの【ドラグナー】は文句なく環境トップとなっている。もはや自分の上ブレを期待するデッキではなく相手がこちらの下ブレを期待するようなデッキになっているともいえる。

 

クロニクルデッキ発売直後に登場した型はこのように大型ドラゴンを踏み倒すような構築では無かったが、最大値を求めた結果になったのであろう。(最初期型もブン回り性能は高く様々なデッキを駆逐していたので同型に勝つために進化したという考え方もできるか。)

前回の記事では《ヘブンズ・フォース》の危険性について語らせていただいたが、《ヘブンズ・フォース》が規制されただけでは勢いは止まらないのではないかという懸念も存在する。(《ロジック・サークル》で《ヘブンズ・フォース》を探すことができると考えれば4積は継続できる。最も、1ターン目にアンタップインの白マナ+2ターン目にアンタップインの赤マナと要求値は高くなるが)

これだけ高速化した環境ではただの殿堂では生温いのかもしれない。前回の記事で「《ヘブンズ・フォース》は規制しなくてもいいと考えている」と記したが、【ドラグナー】を使い相手の《ヘブンズ・フォース》デッキと対戦していると先手ゲーだと文句を言ってしまうことが多々ある。今となっては自分の考えは「プレミアム殿堂入りしてくれ」となった。

12月までは殿堂改訂は無いということになっているが緊急改訂が来ても文句を言うプレイヤーは少ないのではないだろうか。

私はCSなどに出場するようなプレイヤーではないため〇〇との対面や同型で差をつける方法など話せないが、現代デュエル・マスターズを知らない人々に今世間を騒がせている【ドラグナー】について簡単ながら説明させていただいた。参考になれば幸いだ。